ベトナムの介護士事情|職業概念・資格・教育・問題点から読み解く

*ベトナム_介護士_介護福祉士_Care4

ベトナムの介護士に関するレポートです。

 

ベトナムの介護士とは

日本のように専門職としての介護士はまだ存在しない

2021年現在、べトナムには「介護士(介護福祉士)」という職業概念及び専門資格は確立されていない。これは ”高齢者を介護する”という文化自体がまだ浸透しておらず、祖父母両親の面倒は家庭で観るという儒教的慣習によって、介護市場自体がまだまだ黎明期 であることに起因する。

一般的には、家庭でHOLY(ホーリー)と呼ばれるヘルパーが食事、家事等の補助を行う。このHOLYの学歴は高卒程度で特別資格や研修制度は無く、現場OJTで育成されている。しかし、家庭介護現場の労働環境や低賃金に耐えきれず短期間で離職するケースが多く、人材定着が難しい。

一方で、中央・郡レベル病院の老年科や、行政傘下の養護施設や社会保護施設での高齢者ケアはHOLYや看護師(ナース)が担うのが一般的で専門介護士は殆どいない。その反面、民間の有料老人ホームで”日本式介護”を取り入れている一部の先進的な施設には、自社育成介護士や日越EPA(経済連携協定)や介護技能実習制度で研修を積んだ介護人材を登用してるケースも見られる。

高齢化が急速に進む一方で、核家族化から高齢者の単身世帯が増えていることから、従来の家族ケアは難しくなっており、また行政の保護施設は貧困者や身寄りの無い高齢者に限られているため、有料老人ホームや在宅介護サービスなど民間の介護サービスの必要性は徐々に認識され始めている。そして、それらのサービスの根幹を担うのが経験とスキルを持った介護人材である。

老年科がある病院(抜粋)
介護士がいる介護施設(抜粋)

 

ベトナムの介護教育制度

看護系の大学・短大・専門学校

ベトナムで看護過程を有する教育機関は、看護師(学士)を育成する4年制大学・3年制短期大学と中級・初級看護師など複数存在する。しかし、日本のように介護人材を専門的に育成する学部や学科は存在せず、看護の中に介護や老年学の科目が一部あるという程度で、看護と介護が其々独立した学問として存在していない。

一方で、近年の介護分野のEPA、技能実習生、特定技能などのベトナム人介護人材の日本輸出の隆盛によって、 送り出し機関や日本の関係団体・介護事業者が、現地学校と提携して日本式介護学習プログラムを提供して人材育成に努めるケースが増加 している。また、南部のBinhMy Nursing Homeなど民間介護施設も自社で介護学校を作る構想を持っている。

  • 北部:ハノイ医科大学(国)・ハイデュオン医療技術大学(国)・ナムディン看護大学(国)
  • 中部:フエ医科薬科大学(国)・ダナン医薬技術大学(国)
  • 南部:ホーチミン医科薬科大学(国)・ファムゴックタック医科大学(国)・カントー医科薬科大学(国)

介護人材の送り出し機関

日本へ介護人材を派遣する送り出し機関や関係企業は、事前研修として数ヶ月に渡って介護や日本語の学習プログラムを候補者へ提供している。

認定送り出し機関の一つである仁愛国際株式会社はハノイに自社で150床規模の有料介護施設「仁愛老人ホーム」を有しており、自社の研修施設として上手く連携させている。日本人の介護福祉士が現場にいることもあって人材育成の評判も高い。しかし、その他多くの送り出し機関の研修制度は十分なレベルに達しておらず、受入れる日本側からのクレームも多いのが実情である。

新設の育成制度

2017年にホーチミン市の国防省175病院内に社会福祉総合研究所の「さくら介護研修センター」が設置され、現地向けにアレンジした日本式の介護・看護の教育と、日本への技能実習や留学を希望する人材育成の研修施設として機能している。また、2019年頃より地方大学が日系企業や学校とパートナーシップを組んで、本格的に介護学科を開学する動きも見られる。

 

ベトナム介護士の給料

明確に介護士という職業が確立されておらず、しばしば看護師と混同されている。しかし、民間の介護施設では看護学部卒業者を介護士として採用している。 日系施設の場合、平均給料はđ7.5 Million/月(3.5万円)程 に設定されている。

 

問題点

現段階のベトナムにおける介護人材育成は、 海外の介護事業者と現地送り出し機関の介入による人材輸出の意味合い が強く、国内への人材供給は重視されていない。また、国内で育成した介護人材、海外で研修を積んだ介護人材のいずれもの人材を受け入れる機能も無いのが現状だ。

折角、日本などで介護福祉士の国家資格を取得したり介護施設で実習を終えて帰国した高度介護人材が帰国しても、介護現場に就職しないというケースも見られる。これは日本式介護スキルより日本語能力の方が評価されており、介護人材が人材市場において適切に評価されていないという大きな問題点を抱えているからである。

 

今後の展望

大前提として、ベトナム介護市場の成長や国民の介護認識の変化が必要なことは言うまでもない。

国内に関しては、看護師の医療従事者証明証に近い形で介護士(または準ずる)資格認定制度を作り、医療関係者としての介護職の定義と認知向上が必要だと言える。加えて、日本、台湾、ドイツなどの介護現場で経験を積んだ”海外帰国組”が、介護現場で活躍してもらえる人材マッチングシステムと受け皿の用意が必要である。

 

ベトナムご勤務を検討される介護士・看護師の皆様へ

ベトナムは医療専門職不足から外国人の勤務には比較的寛容な国です。介護士の資格制度が未整備なため、日本の介護福祉士の免許を書換えての勤務はできませんが、民間の高齢者サービスの増加により日本人介護士の採用ニーズが高いです。現地では公立系・地場民間の医療機関だけで医療ニーズを賄いきれないことから、ヘルスケアセクターにおける外国人専門職及び外資企業の活躍機会は大きくなっています。Care4ではベトナムで介護士(看護士)としての勤務を検討される方のご相談を賜っております。

ご相談はコチラ>

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

関連記事

  1. ベトナム_ダナン_老人ホーム_介護施設_2020 (1)

    ダナン市・中部の介護施設(老人ホーム)の紹介

  2. 2020年 ベトナム介護に関する意識調査アンケート

  3. ベトナム_ハノイ_老人ホーム_介護施設_2020 (1)

    ハノイ市・北部の介護施設(老人ホーム)の紹介|

  4. ベトナム_ホーチミン_老人ホーム_介護施設_2020 (1)

    ホーチミン市・南部の介護施設(老人ホーム)の紹介

  5. タイの高齢化問題と介護ビジネス市場|人口動態・社会保障から読み解く

  6. ベトナム_老人ホーム_介護施設_設立方法_要件・法律_Care4

    ベトナムの高齢者向け介護施設(有料老人ホーム) 設立方法