ベトナムの高齢化とは|人口動態・社会保障制度・問題点から読み解く(2021最新)

ベトナム_高齢化問題_介護・医療・ヘルスケア_Care4

ベトナムの高齢化に関する市場レポート2021年版です。

 

ベトナムの高齢化とその特徴

65歳以上の高齢者人口740万人(高齢化率7.7%)経済発展途上のまま高齢化社会に移行

ベトナム戦争後の経済復興期から多産多死型であった人口ピラミッドは、1988年から導入した「二人子政策」の影響を大きく受け、また、平均寿命も延びたことから少産少死型へと変化。

かつて「若い国」と言われていたが、近年ベトナムは急速な高齢化に直面しており、既に2017年には65歳以上の高齢化社会(高齢者人口比率7%)へ突入し、2034年には高齢社会(同14%)、2049年には超高齢社会(同21%)になると予想されている。(図表1参照)

そして 高齢化社会から高齢社会への移行期間が17年とASEAN中で最も短く、世界でも類を見ない急激なスピードで高齢化が進んでいる フランスでは115年、日本では25年かかったが、ベトナムではわずか17年である。また、一人当たりGDPが 2,715USD(2019年)とASEAN諸国の中でも低い水準にあり 経済が発展途上の段階のまま高齢化社会に移行 している。

※世界保健機関(WHO)は高齢者を65歳以上と定義しており、ここではWHOの定義を適用する。一方、ベトナムでは高齢者法(59/2009/QH1)によって60歳以上を高齢者としている。

ベトナム高齢化を読み解くキーデータ(2019)

  • 人口:9,620万人
  • 男女比:男性49.8%・女性50.2%
  • 平均寿命:73.6 歳(男性71歳・女性76.3歳)
  • 60歳以上の高齢者の数:1,190万人(12.4%)
  • 65歳以上の高齢者の数:740万人(7.7%)
  • 合計特殊出生率:2.09人%
  • 都市人口:3,312万人(人口の35%)

※出所:計画投資省傘下統計総局(GSO)「ベトナムの人口及び住宅総調査」(2019年4月実施)

ベトナム高齢化・介護問題を読み解くキーデータ_スライド_2020_©CARE4 VIETNAM作成(無断転載禁止)

図表1. ベトナム高齢化を読み解くキーデータ(2019)

 

高齢者関連の省庁・組織

次の3つがベトナムの高齢化対策に関わる主要組織である。

政府の高齢化対策の動向

  • 2004年:複数の関連省庁・中央組織で構成する国家高齢化委員会(VNCA)が設置。
  • 2007年:国立病院や省立病院レベルに老年科を設ける政策を出した。
  • 2010年:高齢者法が制定。また高齢者の経済的・健康的・社会的生活を保障する様々な法律が作られた。
  • 2011年:80歳以上の高齢者に毎月18万ドン支給開始、無料保険カードが発行。
  • 2012年:看護師及び介護福祉士の入国及び一時的な滞在に関する日本国政府とベトナム社会主義共和国政府との間の書簡の交換。
  • 2017年:「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」対象職種に介護職種が追加。
  • 2017年:各省庁の高齢化関連の課題責任の明確化、高齢化対策の活動計画の策定(2021年~)を指示。60歳以上の高齢者と地域 の住民を対象とした体操、健康チェック、介護(家庭訪問)、収入向上、社会・文化活動等の活動を、全国17省のコミューン(社)単位で実施する世代間自助クラブの開始。
  • 2018年:共産党中央委員会で、社会保険改革に関するマスタープランが採択され、国民皆年金に向けた公的年金の導入を含む制度改革を提示。
  • 2019年:二人子政策廃止の方針や現在作業中の健康保険法改正(保健省)、定年年齢の引上げを盛り込んだ労働法改正草案を国会提出。

 

高齢者への社会保障制度

発展途上国ながら社会主義国的性格から国民皆保険制度、年金制度、高齢者手当てなどの社会保障制度や法律制度が存在するものの、地方においては実施されていないなど、実施面では不十分な点が多い。

①老齢年金制度

  • VSS(Vietnam Social Security)による全国民を対象とした包括的な社会保障制度。
  • しかし、実態は公務員および一定規模以上の企業被用者(強制加入)に限定される。非正規雇用が多く、年金基金への加入者が全労働人口のうち20~25%しかいない。
  • 老齢年金は賦課方式で運用されており、原則男性60歳以上・女性55歳以上で保険料拠出期間が20年を超える場合にのみ給付対象。平均月収の55%が受給可能。

②老齢福祉年金

  • 80歳以上の高齢者へ現金給付制度として毎月18万ドン(日本円約900円)を支給。地方では支給されていないケースも多い。
  • 貧困で身寄りがない場合は60歳以上から受給可能。
  • インフォーマルセクターの高齢者の大半が無年金者のため、経済的支援が必要な場合はこの老齢福祉年金を受給する。

③医療保障制度

  • 2020年を目標に国民皆保障の達成を目指している。
  • 高齢者に健康保険カードの給付し約36万人に配布を推進。
  • 医療費の自己負担額が免除(90歳以上の67%にあたる約9万人が対象)

 

ベトナム版高齢化社会の問題

①社会保障システムが未整備

ベトナムの社会保障システムは先進国と比較して未整備であり、高齢化社会に対応できていない。現行の社会保障制度を改革しないまま運用した場合、2030年代には年金財政は継続できなくなると予測される。

  • 非正規雇用者が非常に多い:年金基金への加入者が全労働人口のうち20~25%である。
  • 年金制度の掛け金と給付額のアンバランス:賦課方式で定年年齢は男性60歳、女性55歳(公務員は65歳と60歳)と先進国に比べ若い。

②高齢者の経済問題

老後資金の貯えがなく生活に困窮している人が少なくない。そのため、都市部や海外へ出稼ぎに出た子供が送金して高齢者を支えている都市部の高齢者は社会保障の恩恵を受けているものが多いが、物価高騰に対応できる自立した高齢者は少ない。一方、農村部は物価は安いものの年金や医療保険も加入者が少なく社会保障でカバーできていない。

③単身高齢者世帯が増加

家族機能の変容によって核家族化が進み子供と同居する割合が減少し、独居また夫婦のみの単身高齢者世帯が増えている。女性の社会進出や少子化問題等とも相まって、高齢者を社会インフラとして支える必要性が徐々に高まっている。

④高齢者65%が農村地帯に暮らす

高齢者の居住地域は65%(2019年)は農村地帯に住んでおり、生活水準が低く貧困の問題がある。インフラが未整備の地域も多い。また、田舎の若者は現金収入を求めて外に働きに出ているため、農村には祖父母と孫という家族構成が多い。一方で、近年では都市部に住む高齢者も年々多くなっており、都市部が肥大化している。

④医療費増加と苦しい懐事情

高齢化が進むと慢性疾患の増加や、循環器疾患・がんなどを対象とした高度医療が必要となること、治療も長期化することなどによって医療費が膨らむ。60歳以上の高齢者家族が一人以上いる世帯では保健医療費の割合が高くなることが世界的に報告されている。家計全体に占める医療費の割合が40%以上になると破綻に至る可能性もある。

ハノイの国立中央老年病院によれば、高齢者は平均3〜5個の疾患、主に長期治療または生涯にわたる治療を必要とする慢性疾患を抱えていながら、十分な継続的な治療を受けることができていない。

⑤老年医学専門人材の不足

ハノイの国立老年病院が専門医師養成をし各地に配属しており、各地の省病院と中央病院に50の高齢診療科、302軒の高齢診療クリニックが設置されている。(2019時点)一方で、高齢者医療の専門看護師を養成する機関はまだなく、看護教育のカリキュラムに老年看護を取り入れている学校も多くはない。

⑥介護の概念が浸透していない

介護の概念は浸透しておらず、高齢者の生活支援は家族が行うもののと理解されている。統一的な高齢者ケアの基準等は存在せず、各施設ごとに質が異なり管理制度も存在していない。また、認知症については「年をとれば皆が呆けるのが当たり前」という考え方であり、認知症は病気と捉えていない。

⑦介護人材の不足

介護職という職種が確立されておらず、現場では介護の専門知識が不十分な看護師がケアを行っている状態にある。業界と職業認知度が低い。大卒の学生は急性期看護のできる都市部の大学病院や感染看護の分野に就職している。今後、高齢者ケア施設が増加すれば、働き手となる看護師や介護職の人員を確保する必要がある。

⑧老人介護施設の不足

入居型の介護施設(老人ホーム)の数が非常に少なく、外部サービスを利用する場合は家政婦を雇う訪問型介護が主流。しかし、近年ホーチミン市などの都市部で老人ホームが需要に高まっている中、供給が全く追いついていない状態にある。

行政の社会保護施設

  • 社会保護施設は全国に432施設が設置(2014年)されている。
  • 障害者や孤児など社会的保護を必要な人が対象だが、高齢者専門の施設もある。身寄りのない高齢者(その他戦争功労者とその家族)は無料入居できる。

民間の有料老人ホーム

  • 民間事業者が経営する介護施設で比較的裕福な高齢者を対象としている。
  • ベトナム全土でも30軒程度しか無いと言われている。ハノイ近郊に集中している。

⑨伝統的家族観念の変化

ベトナム人は家族をとても大切にしており他のアジア諸国と同様、「高齢者の介護は家族が行うのが当たり前である」という伝統的文化があり、家族(特に長男の嫁)が最期まで親の世話をするケースが一般的だった。よって高齢者を施設へ入居させることは親不孝だと思われれているという話は良く聞く。

しかしながら、近年のライフスタイルの多様化により、家族集団の維持よりも個人の自己実現や行動の自由が尊重され家族の凝集性は弱まっている。所謂「家族の個人化」現象が都市に限らず農村にも少しづつ浸透している。このように、家族が責任を持って両親の面倒をみるという旧伝統は揺らいでおり、家庭で高齢者の面倒をみることが難しくなってきている。

 

問題解決の提言

介護アプローチ

まず、政府主導で高齢者ケア・養護センターの建設プロジェクトに対して、長期間の土地交付や借用する優遇政策が必要である。現在ほとんどの民間事業者は、20~50年の期限付きで土地を借りなければならない。優先的に低い利息で優遇的な資金を借りられるよう支援や補助金が必要である。

次に、在宅介護においては日本型の地域包括ケアを導入し、各エリア単位で医療・介護の関係機関が連携する。そして、新たに職業としての介護士の役割を整備し、技術専門性を高めてケアの質を向上させるための人材育成が必要。

医療アプローチ

高齢者ヘルスケアを、高齢者関連の病気の予防、発見、早期治療プログラム、老齢に関連する病気の研究プログラム、高齢者の相談、ケアを行うソーシャルワーカー、コミュニティワーカー、 ボランティアといったチームを育成訓練するプログラムと組み合わせる。

また、近年重要性が増す老年科の医師看護師のような高齢者ケアの就業者に対する特別な給料、手当、優遇制度などインセンティブ設計が必要である。現在このような人々の給料や手当はまだ非常に低い。そして、日本の老年科分野の優れた医師や薬剤師を活用し、ベトナムの教育や臨床現場で活躍してもらえるようビザ要件を広げる。

社会保障アプローチ

現状の家族やコミュニティに経済的に依存する仕組みには限界がある。特に、田舎の農業従事者などインフォーマルセクターへ医療保障の拡大と持続のための財源確保が必要である。目下、経済フェース的にも医療政策が優先されるのは当然ではあるが、高齢化のスピードが他国より速いのが大きな不安材料。

 

今後の展望

まだなだ若い国という印象が強いベトナムだが、過去10年は65歳以上人口の増加率が最も高く既に全体の7.7%を占めるなど、高齢化が急速に進んでいる。15~64歳の労働年齢人口が68%を占めており人口ボーナス期が続いているが、それも2040年頃には終わりを迎えると予測されている。

今後、高齢化による諸問題は徐々に顕在化してくだろう。中間所得層向けの民間医療サービスの拡充、またより高度な医療を求める中高所得層の高齢者をターゲットとする高付加価値サービスに対する需要は益々高まっていく。


外部参照


ベトナム医療・介護進出を検討される事業者の皆様へ

ベトナムは高齢化により民間の医療・介護サービスの需要が高まっています。国内の既存事業者だけではニーズを賄いきれないことから、ヘルスケアセクターにおける外国人専門職及び外資企業の活躍機会は大きくなっています。Care4ではベトナムでの医療系サービスや介護系サービスの開業を検討される方のご相談を賜っております。

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