高齢化により民間介護施設の需要が高まるベトナム。
今回は、ベトナムで外国資本企業が高齢者向け入居型介護施設(有料老人ホーム)を設立する方法についてレポートします。
高齢者向け介護施設の法規制
高齢者介護施設の事業に関する法規規制は未整備である。
2021年現在、ベトナムにおける 介護老人ホーム設立は100%外資でも可能 である。ただし、国内投資家によってもあまり行われておらず(WTO加盟公約にも記載されておらず)現行法では明確な規定のない事業のため、当局も審査には慎重となっている。
投資登録書明書、企業登録証明書の審査においては、労働・傷病兵・社会問題省、計画投資省などへのヒアリングも行われ、さらに両証明書の取得後に、労働傷病兵社会問題局による活動許可書の取得も必要である。
(1) 資本金
- 資本金額は決まっていない。
- 一般的な設立費用は2000-3000万円程度の資本金で法人設立は可能。
(2) 投資額
- 投資総額は決まっていない。
(3) 必要なライセンス
- IRC(外資登録証明書)
- ERC(企業登録証明書)
- 高齢者介護施設(有料老人ホーム)の営業証明書
(4) 業種コード
- ベトナム:VSIC8730
- 国連:CPCC93311
高齢者向け介護施設の設立要件
(1) 土地
- 法人登記可能な不動産を見つけること。
- 施設の立つ土地の使用目的と投資を実施する事業が合致する必要がある。
- 高齢者の介護事業を登記できる土地は、その使用目的が社会補償事業となっていることが前提条件。
(2) 立地
- 学校や病院へ利便的にアプローチできる場所である
- 看護・介護となれば立地や環境も許可承認の判断基準になる
(3) 敷地の面積
- 郊外の立地:患者一人当たり30m2
- 都市部の立地:患者一人当たり10m2
(4) 部屋の面積
- 入居者が通常の介護である場合:患者一人当たり6m2
- 入居者が24時間の介護が必要な場合:患者一人当たり8m2
(5) 設備
- 調理設備、社員の事務所、娯楽所、水道、電力、施設内歩道、治療施設(もしあれば)について基本的な条件を満たす
- 医師による治療施設の併設は必須でない
- 健康に対して害のない空気、電気、飲料用の清潔な水道が確保されて
(6)人材
(7) 各種ライセンス
- IRC(外資登録証明書)
- ERC(企業登録証明書)
- 高齢者介護施設(有料老人ホーム)の営業証明書
高齢者向け介護施設の設立手順
営業開始までの流れ
大まかにはまずは外国資本企業を設立するためにIRCとERCを取得、次に介護施設の営業証明書の申請、そして営業証明書のの公表の3段階があります。
- 不動産の物件探し、賃貸契約の締結
- 申請書類の作成、各種公証書類の入手、ベトナム語翻訳・公証
- 投資登録証明書類(IRC)の申請書類提出
- IRCの取得、企業登録証明書(ERC)の申請書類提出
- ERCの取得、国家情報WEBへのERCの内容掲載
- 会社印鑑の作成
- 計画投資局への印鑑使用通知書の取得
- 法人銀行口座の開設
- 施設の建設工事着工・完工
- 各地域の労働傷病社会事業局へ介護事業の活動許可書の申請書類提出
- 同許可書の取得、新聞への活動許可書の内容の広告(同許可の取得より30営業日以内に3回)
必要書類の取得
①IRCの申請
IRCとは外資登録証明であり51%以上の外資の場合に必要。(投資法第33条1項、第37条2項)
(1) 作成が必要な書類:
- (a) 投資案件の実施申請書
- (b) 投資案件の企画提案書
- (c) 投資企業 の財務能力に関する報告書
(2) 法規に基づき必要な添付書類:
- (a) 投資家の現在事項証明書の公証写し
- (b) 投資家の直近 2期の決算報告書の写し(社印の押印が必要)
- (c) 事業の実施場所の不動産賃借契約書 (ベトナム 語原本)
- (d) 不動産関連の書類の公証写し
(3) 法規に基づく規定はないが、実際上は要求される可能性のある添付書類:
- (a) 施設の計画書 (フィージビリティー・スタディー)と図面
- (b) 設備、備品のリスト、およびその種類・数量・効用など
- (c) 国外での当該事業の許可書(ある場合)
- (d) 国外で運営する当該事業の法人のパンフレット、写真、HP(ある場合)
(4) 申請書類への記載内容
投資家の情報、現地法人の社名、企業形態、プロジェクト名、プロジェクト実施場所、目標、規模、 資本金と出資方法、住所、期間、スケジュール、労働力の需要 (注:稼働時の被雇用者数)、優遇 措置の享受、経済 – 社会への投資の作用・効果、投資条件を充足することの説明
②ERCの申請
(企業法第22条、政令No.78/2015/ND–CP第23条)
(1) 作成が必要な書類:
- (a) 企業登録申請書
- (b) 現地法人の定款
- (c) 現地法人の法的代表者 家による任命状
- (d) 現地法人の委任代表者への投資家による任命状
- (e) 現地法人の委任代表者のリスト
(2) 添付書類:
- (a) 投資家の現在事項証明書の公証写し
- (b) 現地法人の代表者のパスポートの公証写し
- (c) 現地法人の委任代表者のパスポートの公証写し
- (d) IRCの公証写し
③介護施設の活動許可書の申請
営業証明書の申請は施設を設置する各省市のベトナム労働・傷病兵・社会問題局。(No. 103/2017/ND-CP 第29条1項)
(1) 作成が必要な書類:活動登録申請書
(2) 法規に基づき必要な添付書類:IRC、およびERCの公証写し
(3) 法規に基づく規定はないが、実際上は要求される可能性のある添付書類:
- (a) 施設の計画書 (フィージビリティー・スタディー)と図面
- (b)設備、備品のリスト、およびその種類・数量・効用な ど
- (c) 国外における当該事業の許可書(ある場合)
- (d) 国外で運営する当該事業の法人のパンフレッ ト、写真、HP(ある場合)
- (e) ベトナム人有資格者のリスト
各種優遇政策
高齢者10人以上に介護サービスを提供することが可能な施設は、医療・社会的企業に分類され以下の優遇施策の対象となる。
法人税
- 法人税は一般企業の半分の10%
- 課税所得が発生以降、最初の4年間は免税。その後5年間は50%減税。
- 指定地域の場合、
- 課税所得が発生以降、最初の4年間は免税。その後9年間は50%減税。
VAT
以下の業界ではVAT課税は0%となる。
- 生活介護サービス
- 医療・栄養サービス
- レクリエーションサービス(体操など)
事業用地確保
設立する地域における社会的ニーズや投資予算によって事業用地確保の優遇がある。
設立費用
一般的な設立費用は2000-3000万円程度の資本金で法人設立は可能(通常のオフィスやレストランなどと考えてよい)
今後の展望
現在、ベトナム全土にはハノイ市近郊を中心に民間介護施設が30-50件ほど存在している。特に近年は南部ホーチミン市では民間施設の要望が一段と高まっているが市場規模や採算性の問題からまだ事業者数は非常に少ない。中部ダナンに至っては現在民間施設はゼロだ。
今後、現地不動産系企業の参入や外国資本の進出により、有料老人ホーム数は緩やかに増加していくだろう。尚、 訪問介護は明確な法律規定は無いが、外国人投資家に対して介護施設と同形態での事業を当局は認めていない。
外部参照
- JETROホーチミン提供資料(*非公開)
- 高齢者法の実施ガイドラインに関する政令_(06/2011/ND-CP)
- ベトナム現地法人設立に関するライセンス _2015年7月施行の投資法(67/2014/QH13)
- BNTD(Trung tâm chăm sóc Người cao tuổi Bách Niên Thiên Đứ)HP
ベトナム介護進出を検討される事業者の皆様へ
ベトナムは介護概念が根付いていない反面、高齢化により民間の介護サービスの需要が高まっています。医療とは異なり介護分野は法規制が未整備で様々なスキームで立上げが可能です。現地では日本式介護モデルを採用する介護施設や教育施設も多く、介護領域においても日本ブランドの評価が高いです。国内の医療既存の介護事業者だけではニーズを賄いきれないことから、ヘルスケアセクターにおける外国人専門職及び外資企業の活躍機会は大きくなっています。Care4ではベトナムでの介護施設や介護系サービスの開業を検討される方のご相談を賜っております。